【19】 立冬〜小雪  ヌマガメ類の越冬生態について(文献資料)
 

ヌマガメ類の越冬生態         栃本武良(姫路市立水族館)


 これらの淡水産カメ類の越冬生態については、まだまだ誤解されていることが多い。
 飼育の解説書には、陸上の穴で木の葉が積もったところにもぐり込んでいる絵が描かれている。
 そのため家庭でも箱に落ち葉をつめて冬眠させる人が多いようだ。
 運良く生きて春を迎えることができたカメもいただろうが、多くは越冬中にミイラになってしまう。
 水族館の飼育係でさえ同じような過ちを繰り返していたのであるが、余りにも死亡率が高いことと、
 冬でも落ち葉や藁が発酵してカメの体温を上げてしまうため動き回ることなどから疑問がでてきた。
 
 
ある冬のこと、池干しをするがエビが沢山いるので採りにこないかとの連絡があった。
 早速出かけた池では底泥をウナギ掻きでかき回しては運の悪いウナギが挟まって捕まるたびに
 大きな歓声が上がっていた。
 時々ウナギ掻きにカメが当たるということで、胸まであるゴム長で池に入りヘドロを足でかきまわすと
 固いものが当たる.。
 それを足の甲に乗せて引き上げるとカメであった。
 ・・・・・
 このように、ため池でクサガメたちは水深2〜3mの池底のさらに底泥の中に潜って越冬していることが分かった。
 さらに、きれいな水を好むイシガメも川の淵に溜まった落ち葉の中や岸辺の水中の穴の中で越冬していることを
 カメを食用にしている人から教えられたのである。
 水温4〜5℃の川で肩まで水につけて穴へ手を入れて探ると腕がしびれてくる。
 感覚のなくなった手で掴みだしたのは石ころだったりして笑われたが、
 冬に交尾するイシガメにとってはオスもメスも集合する越冬穴は遺伝子を授受するのに恰好の場である。

 ところで、姫路市立水族館では屋外にカメの飼育展示池があり、・・・・・
 越冬中にはコンクリート・トラフの中にギッシリとカメたちが詰まって静かに過ごしている。
 水面が凍結することもあるが、温かい日差しに出て来る個体もある。
 山陰地方から見学に来た人がこれを見て、このカメはどうして冬眠しないのかと驚いていたが、
 自然状態でもみられることであるという
説明に半信半疑の様子であった。
 寒さの厳しい山陰地方では完全な冬眠をしているのであろうが、
 冬も温かい瀬戸内海地方では不完全冬眠となる。

 当地方でも海岸線のみならず田畑が宅地化され、不要になったため池も次々に埋め立てられている。
 昨冬のこと、池の埋め立てをしている会社からカメがいるので埋めてしまうのが可哀そうだから取りにきて欲しい
 という連絡があった。
 温かい日差しに誘われて目覚めたカメは運が良かったが、寝坊助ガメは生き埋めである。
 あのため池を埋め立てた宅地では、その下に多くのカメの化石が作られていることになる。
 せめてカメの活動期であればとも思うが、それもたいした差がないことかもしれない。
 このようにして毎年多くの生き物たちが人知れず生き埋めにされていることであろう。
 

 栃本武良(1993年)ヌマガメの越冬生態 『ため池の自然』No17 ため池の自然研究会 より一部抜粋

 

半水性ガメの越冬生態     伊藤 勝(下呂温泉「爬虫類の森」)


 半水性ガメといったのは、水中生活と陸上生活とが相半ばしているカメたちのことで、
 代表的な種としてはイシガメ、クサガメ、アカミミガメなどである。
 このカメの仲間はどん欲な性質をもっている。
 餌の種類も多い。
 肉類、魚類、果物類、野菜類など何でも食べる。
 夏季は特に肉類を好み、このことが冬季の体力の維持に非常に役立っている。
 越冬中において、彼らの食欲は、水ガメ類(スッポン類、ワニガメ、マタマタなど)に較べると著しい低下を示す。
 しかし果物類には食欲を示し、とくにバナナはよく食べる。
 他の餌と混合して与えるとバナナだけ拾って食べる光景がよくみられる。
 
 越冬中の半水性ガメの飼育について、注意すべき点を挙げてみよう。
 このカメたちは陸上生活も行うわけだから、当然室内暖房が必要である。
 室温は20℃以上が良い。
 しかしそれだけでなく注意が払われなければならないのは、陸の床暖房である。
 床面温度は25℃以上なければならない。
 この床面温度がこのカメたちの越冬生活を左右する。
 一時的に水温が下がっても、彼らは陸に上がって身体を暖める。
 赤外線灯なりで背中からの保温は主として消化を助けているわけで、
 全身的な健康維持には床面からの保温が大切だ。

 この大切な面での具体的な状況を説明しよう。
 冬季において、弱ったカメの診断に、カメを持ち上げてみるのだ。
 体重の大小も重要な健康判断のポイントであるが、それよりももっと重要なことを判断するためだ。
 持ち上げて裏側つまり腹側を上にして、首と手足を観察する。
 この部分が乾いているか、湿っているかをみるのである。
 とくに、首の回りの部分が湿っている場合は、注意を要する個体である。
 
 カメの病気のほとんどは腹側から起ってくる。
 手足と首回りに白い斑点ができる皮膚病や、鼻汁を出す肺炎などの原因は身体を覆う湿気である。
 室温が高く温水を流しているために、必然的に室内は多湿となっている。
 この多湿から守るために、床面暖房によって、床(陸)の乾燥を考えてやる必要がある。

 一般に爬虫類の越冬は、困難なものである。
 ・・・・・
 その中にあってカメ類の越冬は、比較的容易である。
 それには、第一に、カメ類がヘビ類ほど冬季の拒食を見せないこと。
 第二に、カメ類は、ある程度の環境変化に順応する能力を持ち合わせていることなどである。
 そして、最後に、カメたちの生活は、単純な生活に陥りやすい飼育者の心を、
 なごませてくれるようなユーモラスな光景の連続であるといえるだろう。

 伊藤 勝(1984年)飼育カメの越冬その2『動物と自然』Vol .14 No.1 ニュー・サイエンス社 より一部抜粋
 
注: 下呂温泉「爬虫類の森」は、現在ありません。

 
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